目が釘付けになった色鮮やかなマムシの首のような物体がシダの新芽で、あっという間に成長して大きな葉になっていくのだと気づいたとき、愛おしい命を感じて「この子を描きたい!」と、頭の中にくるくると構図が渦巻いてくる。限られた時間の中での集団学習会ではスケッチする時間はないので、無我夢中でシャッターを押し続ける。
最後にガイドさんの素晴らしい提案で、数分間じっと無言で遺産を体感させてもらえることになった。長い年月が止まったままのような薄暗い自然林の中で、風で揺れる木々と鳥の音。そこへ神様の贈り物?タイムリーにキツネの嫁入りがやってきた!青くて若い香りが顔に落ちてくる。小さな雨粒が消えると、木漏れ日が光る神聖な森林浴を五感で体感。またひとつ、描き切れない美を見つけてしまった。
興味深かったのは、森の中で教えてもらったアマミノクロウサギの子育て巣穴。ナイトツアーでも一瞬しか見られないそうだ。学習会のあと「1000円でよいの?」と驚きのボリューム、美味な沖縄ランチを楽しんだ後で、唯一の湧き水であるアガリマタ入口でみつけた糞にも、参加賞で戴いたトイレットペーパーのイラストにも、ネズミのようなクロウサギに愛着がこみあげてくる一日であった。