玉城和美の描き絵空間

琳派の元禄文化「かきえ」を令和へ繋ぐ絵師の活動日誌

緩和ケア

京都国立医療センターに「緩和ケア」があることは知っていましたが、治癒見込みのない患者が最期を迎える場所、ホスピスだと思っていました。ところが、そうではなく、癌と診断されたら外来でも入院でも在宅でも心と身体のケアが受けられるという啓蒙キャンペーンでした。
会場は多目的ホールでとても広く、ちょうど空いていました。若い看護師さんの前に座ると、リラックスできる柑橘系のアロママッサージをしてくださり「今日はどうされたのですか?」と優しく尋ねられ、私は淡々とまるで人事のように話し出しました。「そんな大変なときに・・・もし良かったらあちらで癌治療専門のナースが相談窓口を開いていますから、お話だけでもしていかれたらどうですか?」と一緒に目を潤ませながら、「きっと大丈夫ですよ!」とものすごく心を込めて、とても力強く長い時間、「そうか、手術優先で、個展を延期すればいいんだな。」と、話しているうちに少し頭が回り始め、結論がでるまでマッサージしてくださいました。腕がポカポカ、いい香りで気持ちが落ち着きました。
ちょっと迷いながら、そのまま相談窓口へ。「すみません、会場の中で梯子しています、実は・・・」と泣いてしまいました。プロのカウンセリングとはすごいものだと思いました。まだ癌だと結論が出ていない初対面の私に対して、泣いたり笑ったり自然体で共感してくださり「あなたは運がお強いですね。このイベントは年に一日しかないのですよ。今日はお出会いできて良かった!もしも嫌じゃなかったら、主治医に緩和ケアの予約を入れて欲しいと申し出てください。そうすれば、またいつでも、お話が聞けますからね。それから、退院後の生活が不安だとのことですが、先生はその道のプロなので、絶対に大丈夫!入院中に上手にホルモン量を見極めてくださるから、今度は社会復帰もきっと早いですよ。個展のことも一緒に考えましょうね。あなたの暮らしがかかっているのだから、お金もかかることだし、今すぐにあわててキャンセルしないで、希望通り少し先延ばしにできたらいいですね。」と親身になってくださいました。
なんだかとても励まされ、私はやっと結果を聞きに外来病棟へ戻ることができました。時計を見ると二時間も経っていて、会場は講演を聴きにきた人で一杯になっていました。

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