玉城和美の描き絵空間

琳派の元禄文化「かきえ」を令和へ繋ぐ絵師の活動日誌

絵師の直感

連日、キモノの図案を考えて時間だけが過ぎていき、焦りだした先週末、墨絵の師、李庚先生門下生、Y先輩の個展を観に行きました。会話は自然と、絵のテクニックとキャリアについて進みます。「僕は、酔絵というか、無の境地で作為せずに描くことを目指しているが、10枚描いたら6枚目くらいがベスト、初めは力み過ぎ、あとは荒れてくる。絵の技術は教わったり鍛錬したからといって上達するものではないね。」と謙遜されていましたが、デフォルメされた先輩独自の世界は、確実に前回より素敵でした。
帰り道、堺町通りの中野商店プティミミという老舗で、見事な葡萄の銀細工を見つけました。黙って見とれていたら、モノづくりする人間だと感じられたのでしょうか?ご主人が、「伝統工芸は、しっかりとした技術ありき、不器用な人間でも、3年から5年も修行したら、誰にでもこれくらいのモンは作れる、それを最近の若いモンは同じことの繰り返しができなくて、口を開けばアートだ、自己表現だと言いだし・・・」と、まるで先ほどの問答を聞かれていて、答えのひとつを伺ったような不思議な体験をしました。
私は、職人さんでも伝統工芸士でもないので修行経験はありません。しかもノージャンルでオンリーワンの世界をパイオニアしているので、迷うことも悩むことも行き詰まることも多々あります。でも、絵師とか絵屋とか精進というニュアンスは好きだなあ、と、そんなことを考えていたら、またまたそのご主人が、「いいモノ作ろうと思ったら簡単!たくさん良いもの観て聴いて、旨い物食べて、いろんな経験して、自分の心を深めたら勝手に出てくる」と見事に一言。その瞬間、私の歩いている道は間違っていない!後ろを振り返ったり止まったらあかん、と妙に自信がわいてきて嬉しくなりました。
個展で、自分の作品と合わせて身につけるために、リングとピアスを買おうと決めました。そして、ずっと迷って下絵ばかりつくっていたキモノのモチーフを、潔く葡萄一本に決めて、旨く描くための下描きもやめて、一気に墨を入れました。明日から彩色と地染めに入ります。

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