玉城和美の描き絵空間

琳派の元禄文化「かきえ」を令和へ繋ぐ絵師の活動日誌

ようやく春に

消えかけていた制作意欲が、冬眠から覚めたような春の兆し。コロナで心身ともに苦しんでいる人は多いが、痛みの受け止め方は性別や年齢、職種、蓄え、家庭環境等によって様々だろう。だが、共通してダメージを受けているのは感性だと思う。
一年前の三月に三週間の徳之島フィールドワークから帰宅した私を待っていたものは、未知のウイルス恐怖をあおるような報道とトイレットペーパー争奪戦だった。イベント延期、スケッチ湯治中止、レッスン自粛、、、真面目に正直に務めた自粛生活が私に与えたものは心身のキャパ喪失。全ての意欲がなくなり、ただ一日が過ぎていく。何を見ても感動しなくなってしまったのだ。私は目の前のリアルな感動しか描けない絵描きなのに、これではいけない!
そう気づかせてくれたのは、いつもの如く体に現れた死なないけれど疎しい異変。自分勝手で我儘で感情起伏の激しい私を認めて、付かず離れず画業を応援してくれる大らかで理知的な心友たちとの密な触れ合い。そして、旅に出て自然の美しさを五感で堪能することだった。
心身のバランスが取り戻せたので、まずは掃除。断捨離したアトリエで久しぶりにPC起動。画像ファイルでみつけたお宝は、小雨の中、島の畑で無邪気に笑う私と美しいパパイヤの白い花。「いつでもいいので好きなように描いてね。」と、一年も預かったままの貴重な芭蕉布に向かう。

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