玉城和美の描き絵空間

琳派の元禄文化「かきえ」を令和へ繋ぐ絵師の活動日誌

ロングバケーション 道後

来島海峡を船で渡り今治の造船所へ抜ける海の真ん中で、潮の流れが真正面にぶつかる箇所がいくつかある。小さな島がいくつも隣接する瀬戸内海ならではの不思議な光景だ。潮が勢いよくぶつかると、そこで渦潮が生まれる。本屋さんが選ぶ本№1に選ばれた今話題の村上水軍の本拠地だ。船の上から眺めながら、どれだけの船と命とロマンスが沈んでいるのだろうと、美しさのあまり吸い込まれそうになる。
ここからは、松山で暮らす友人と合流して、車を出してもらい、道後温泉にあるセキ美術館へ向かう。芸術にふれる喜び、色彩の美しさをゆったりと味わって欲しいというコンセプトで建てられた「浴衣がけでもどうぞ」という旅行者にも愛される洒落た小さな美術館だ。小磯良平東山魁夷に加えて、嵐山天龍寺の天井に睨み龍を描いた私の大好きな加山又造の作品がたくさんあるというので、金比羅へ向かう前に立ち寄ることにしたのだ。
京友禅下絵師の家に生まれ、夢路同様、ジャンルやタブローにとらわれず、生活用品にも本画を描いたり、本の装丁デザインも受けたり、墨絵で裸婦クロッキーにも深く取り組んでいるところが好きだったのだが、芸術論を丁寧に語るインタビュービデオも放映されていて、久しぶりに講義を受けたような嬉しい気持ちになった。
それにしても瀬戸内には個性的で良い美術館が多い。ひとつひとつ楽しんでいくうちに、旅も後半になっていく。

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