大三島大山祇神社の参道にあるお宿「茶梅」さんは、古くて昔懐かしい匂いがする。私がとりわけ気に入ったのは、部屋に時計がないことと、小さな姿見があって、引き出しの中に、糸と針と糸切りばさみがさりげなく入っていたことだ。お部屋係の仲居さんは、まるでコンシェルジェのように近隣観光の手助けをしてくださるし、部屋食もいい。日本手ぬぐいをかけるような欄干や行灯など、私の好みのお宿なのだ。そして一本釣りにこだわった旬魚のオンパレード。さわら、かさご、めばる、石鯛。御造り、煮物、焼き物、揚げ物と味も量も大満足。
瀬戸内は柑橘類も豊富だが、温暖で雨が少なく空が明るい。海と島が連なる美しい土地だ。この恵まれた自然の美しさと食べ物の豊かさがまるで南仏のようで、素晴らしい画家や作家を大勢生み出しているのだろう。私も創作意欲を掻き立てられ、思いは自然と来年初夏の個展へ飛んでいく。