玉城和美の描き絵空間

琳派の元禄文化「かきえ」を令和へ繋ぐ絵師の活動日誌

はじめての女川⑨




全てのご縁は、赤カブの絵一枚から始まった。きっかけは、2012年「女川の仮設住宅へ芸術作品を贈ろう」という京都造形芸術大学千住博学長の一言。自分探しのつもりで社会人入学。芸術への探求は楽しく「玉城和美の描き絵空間」をブランド化して卒業、個展デビューしてこれからというときに甲状腺ガンが発覚。鬱のトンネルで道に迷い、しんどくて逃げ出すように離縁した半月後に起こった東北の地震。ニュースで「家族の絆」が流れる度に胸が痛んだ。「原発事故の影響でこどもたちに自分と同じ病気が増える」という残酷な事実にも特別の思い入れが加わった。「無力な私にも何か絵でできることはないだろうか」と思っていた矢先だったので、すぐに応募した。
受け入れ側の窓口は、女川市役所生涯学習課に勤務されていた遠藤さん。学生達のつたなく様々なジャンルの作品300点を仕分け、記録用の撮影と所有権管理、仮設住宅への告知、体育館で展示。美に対して興味のある方に足を運んでもらって「気に入ったら持って帰っていいですよ。」と配布。まるで里親探しの仲人のように、さぞかし気苦労が多くて大変だったことだろう。
私はご先祖様のお陰なのか、ものすごくご縁の運が強い。鈴木さんは、大人の塗り絵をなさったり、従兄弟が画家だったりと「直描きした絵」が好きな方で、写真や陶芸には興味がなかったそうだ。しかもお世話になった遠藤家の優美子さんから「作家さんにお礼状をお願いしますね」と葉書まで渡されては、拒否もできなかったろう。文通が始まり絵も一緒に新居へ移る。今回の来訪も暖かく迎え入れてくださった。
大学の企画は一年限りだったので、一念発起して役所に連絡を入れた。遠藤さんのご縁で繋がった「私独りの女川アートサポート活動」は、「すばおな花一杯運動」「えくぼハウス」「はじめての女川」へと繋がった。アラ還となった今「頑張る」という言葉は好きではない。だけど、自分にできることを無理なく続けていくことは素晴らしい。同じような心を持つの人との良縁を呼び込み、元気を頂き、やがては命を感じる作品を産み出すことに繋がっていくのだと心から思う。

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