玉城和美の描き絵空間

琳派の元禄文化「かきえ」を令和へ繋ぐ絵師の活動日誌

京袋帯①

久しぶりの和装オーダーは、珍しい京袋帯のお話です。長さは一重太鼓しか出来ない名古屋帯と同じ寸法ですが、表裏二枚の布地で芯を挟み、一見すると二重太鼓ができる袋帯のような形に仕立てたもの。リバーシブルでつかえるので昼夜帯と呼ぶ方もいらっしゃいます。
主役の白布地は、お年を召した方が昔に叔母様から頂いたという桐箱に、たたんで糸で綴じて入っていました。恐らく50年以上前のモノなので、「まずは、これがつかえるのかどうか?」というご質問から始まりました。とりあえず個展会場でお預かりしました。箱の上書き「本場大島紬」を頼りに、組合へ電話で問い合わせたところ「昔は仲人様へのお礼に献上品として白い絹が重宝されたのですが、今はもう織っていません。懐かしいですねえ。充分つかえると思いますが、反物の糊を湯通しで落として検品してから描き絵されたほうがいい。喜んでさせて頂きますよ。」との温かいお言葉。早速ご好意に甘えて鹿児島へ送付したのが昨年末。年越で、美しい光沢を出した張りのある素晴らしい大島紬が巻物になって送り返されてきました。一部つかえないところがありましたが、やや生成りの素晴らしい大島紬です。
生地は、着尺分(キモノが1着作れる長さ)あるので、普通の名古屋帯なら3本も作れますが、ご本人の「体格がよいので、前幅を広く出したいから名古屋帯仕立ては好きではない。年齢を考えると3本も作る気持ちにはなれない。真夏以外「時知らず」で気軽につかえる洒落帯が欲しい。」というほとんど夢物語に近いようなご希望を叶える為に奮闘してきました。

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