玉城和美の描き絵空間

琳派の元禄文化「かきえ」を令和へ繋ぐ絵師の活動日誌

ロングバケーション 尾道2

閉じられた本堂の扉に張られた「鳴龍天井」と書かれた文字を見て、「龍の天井画は、やはり睨み龍ですか?」と尋ねると、「京都からですね?どんな龍か、特別にあけて見せてあげましょう。」と奥へ入って中から鍵をあけてくださった。「今日はお休みですが、まあ庭くらいはどうぞ」と案内してくださった男性は、なんと住職様だったのだ。
天井を見上げると何も描かれていない。ただ、横に細長く少し低めの美しい板張りの天井が広がり、中央に「龍」と書かれた小さな正方形の紙が張られている。住職様のおっしゃるとおりのお作法で、その真下に立ち、心を込めて一度だけ拍手すると、龍が天から降りてきて、文字では表現できない鳴き声が、お堂中に響き渡るのだ。
それは、息を呑むような迫力と美しい音色だった。まるで祈りに答えてくださったような感激の余韻に浸っていると、「ほお、そういう心をお持ちでしたか。」と静かに感想を述べられる。人によって龍の声が異なるのだという。
ご本尊の阿弥陀様を修復に出したら、胎内から足利尊氏由来のすごいものが出てきて調査中だとか、今では安藤忠雄設計で有名な尾道美術館だが、旧館の玄関フォルムは、うちの本堂の屋根と同じデザインで、地元の人間にとっては、下から見えるのが誇りだったとか、いろいろ興味深いお話など、お忙しい中をとても親切に案内してくださった。

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