玉城和美の描き絵空間

琳派の元禄文化「かきえ」を令和へ繋ぐ絵師の活動日誌

エル・グレコ展

大阪中ノ島の国立国際美術館で12月24日まで開催の『エル・グレコ展』。宗教画は暗くて退屈であまり好きではないのですが、スペインだけではなくアメリカやフランス、イタリアなど世界中から傑作ばかり50点以上終結すると聞き、思い切って出かけました。
圧巻!3メートルを越す『無原罪のお宿り』は、宗教的な難しい解釈は全くわからなくても、聖母マリアの美しさは素晴らしい。薔薇と百合の大地から天空にかけるエネルギーが天使や雲とともにマリアもろとも、ぐ〜っと立ち上がっていく勢いのようなものが、「名画だなあ。」と見とれさせました。まさに、「絵画に言葉(キャプション)はいらない。」でした。
そして、ひとつわかったことは、グレコなどの宗教絵画は、普通は、一般の教会の祭壇の中にあり、たいていは薄暗く見上げる高さのところにあるので、鑑賞絵画としては、色彩的に見劣りするハンディ空間に存在するということ。また、グレコは、自らが書き残しているように、見上げることを計算して、マリアや天使を細長くデフォルメしているので、たとえ真正面から写して印刷物にしても、間延びした構図で美しくないということ。
会場では、そのあたりをきちんと計算して高めに展示、しかも、照明が明るいので、色が非常に鮮やかで美しい。むしろ、衣の色は、精密な人物描写に合わないような人工的な原色を多用しています。人の目の錯覚や、空間の暗さをきちんと計算して描いたグレコは、画家でありながら教会という空間を見事に演出した作家だと初めて知りました。
仏像と同じく、現地の教会で、祭壇とともに拝んだら、きっとまた違うのだろうな、もっと厳かで素晴らしいのでしょうね。

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