玉城和美の描き絵空間

琳派の元禄文化「かきえ」を令和へ繋ぐ絵師の活動日誌

一具もの、描き絵帯

お洒落なキモノ通の方から、名古屋帯の注文が続きます。染め帯といえば、白の塩瀬が定番で、潔くて美しいのですが、手垢などを考えると、やはり淡い地染めをしてから描くほうが、使い勝手が良いようです。前回は、お嬢さんの振袖の残りで、ずっと置いてあったお手持ちの白生地縮緬を、薄いアーモンド色に染めて、薄紫のあけびの実と、珍しい花を上向きに踊るように描き、さし色にトルコブルーの花アブを飛ばしました。腹紋は、昼夜帯にして3シーズン使えるように工夫、とても喜んで頂けました。
今回のお客様のために探した帯地は、ちょっと変わった斑入りのワイルドな生成りなので、あえて地染めはしませんでした。黒っぽい大島に合わせたいそうなので、お太鼓は、たれと続き柄にして格をあげます。黄色がパーソナルカラーで、お好きな色だそうなので、琵琶もどうかと提案したのですが、「野菜のたくましさが欲しい。」というご希望。春から初夏に開花、夏に結実、秋に収穫して冬に味わう京都の伝統野菜のひとつ、鹿ケ谷南瓜を選び、三日かけてデザイン画完了。これで、明日から墨入れでき、なんとか今月中には、御仕立ても上がりそうです。
描き絵は、のり置きせずに、直接、筆で、生地に勢いよく書のように描くので、下絵を写すことはしません。が、帯の場合は、柄つけの位置と大きさが大切なので、かなり綿密に、何度も何度も、別紙に下絵を描きます。それでも、本番は、つい大きく育ててしまう私の癖と戦いながらの制作となります。
久しぶりに、和ダンスを開けてみたら、麝香の良い香りがします。やっと、9月。まだまだ暑いけれど、これからは、お出かけにキモノが重宝する季節です。作品の帯や襟で遊びたいので、最近は無地や紬しか着なくなってしまいましたが、昔の色鮮やかな友禅や、高い技術の父の形見でもある西陣織の袋帯をしみじみと眺め、「日本人女性で良かったな。」と思うとともに、お二人のキモノシーズンに間に合ってよかったと安堵するひと時でした。

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